跡継ぎとして駄目でも起業して頑張ればいい
父からの電話
先日父親から電話がありました。”今あるお店を閉めようと思う” と
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが,私の父は大阪府下で婦人服専門店を経営しています。年齢は50歳以上の所謂ミセスの専門店です。元々は祖父が創業した紳士服店(かなり昔に既に廃業をしています)に入ったのですが,やはり自分で事業を興したいと言う事で祖父から援助を受け独立し今から40年ほど前にお店を出しました。
最盛期で4店舗,年商は2.5億ほどまで行ったのですが,徐々に売上が下降し始め,6年ほど前に1店舗を閉鎖し,今回2店舗を更に閉鎖を決めた様です。残り1店舗ですが父の話しぶりを聞いているとそんなに長くなく,近いうちに最後の1店舗も閉鎖し廃業と言う道を選ぶ事になりそうです。
”誰にも迷惑をかけないうちに店を閉めようと思う” 電話で話した父の声は少し寂しそうでした。
効率と関係性
私が父の会社に入ったのは2005年,今から12年ほど前の事です。当時はお店は4店舗あり,最盛期から比べると売上は落ちていましたがまだ1.5億ほどの売上はありました。ワールドを退職し父の会社に入った私でしたが,ワールドでそれなりの仕事をしてきたので(今から考えると全然たいした仕事はしていない。。会社の看板があって出来た事を自分の力と過信していました)方法論には自信を持っていました。
ワールドで学んだのはサプライチェーンマネジメント,簡単に言うと金太郎飴の様な同じお店を全国に出し”効率”を追求した方法で店舗を管理し売上を取っていく方法でした。対して父のお店は地元のお客様を相手に如何に”良い関係性”を築いていくのかが大切。ある意味全く逆だったのですが,当時の私はワールドで学んだ事のみが正解と思い込んでいたので効率化をどんどん進めていきました。
売上は数年で戻ると言う私の予測とは真逆の事が起こりました。売上は激減し,スタッフとの関係もどんどん悪化していったのです。でもそんな時でさえ私が”考え方を理解できないスタッフが悪い,自分は悪くない”と思い込んでいました。しかし数字は正直です,私が推進した”効率化”が結局のところ売上の激減を招いた事を自分で認めざるを得ない状況にまで追い込まれました。
毎日の仕事が全く面白くない,スタッフからも全く相手にされない,あるのは将来に対する不安のみ。自己概念は最悪でどんどん太る,そんな人生最悪の日々を過ごしている時にマーケティングコンサルタントの藤村正宏先生に出会いました。
藤村正宏先生との出会いが人生を変える
藤村先生との出会いが私の価値観,仕事観を大きく変えイルサルトを立ち上げるキッカケになりました。あの時藤村先生との出会いがなければイルサルトは誕生していません。
最初は親の会社とイルサルトの仕事を並行してやっていたのですが,半年ほどで親の経営している4店舗のうちの1店舗の売上を追い越しました。今まで実績と言う実績を作った事のない私にとって初めての成果です,自分にもやったら出来る!少しですが自信を持つ事が出来ました。
イルサルトの仕事に暫くは専念させて欲しいと親にお願いし,そこからは無我夢中で仕事をしていたのですが頭の片隅にはいつも親の会社の事がありました。”このまま離れていいのか?” ”自分勝手すぎないか?” ”親も帰ってくるのを待っているのではないか?” しかし自分で始めた仕事が面白くて仕方なく,今から3年ほど前に悩んだ挙句,家業を継がない決断を親に伝えました。
自分が困った時だけお世話になって,自分の好きな道が出来て形になったらサヨウナラ,義理を欠いた行動で跡継ぎとしては最悪です。しかし親の会社に入る時も,イルサルトを立ち上げる時も,専念させて欲しいと言った時も,継がない決断を伝えた時も親は何も言わずに私の決断を尊重してくれました。
仕事を頑張れる原動力
今回父からの電話を聞いて思った事が二つあります。自分が継いでいれば閉店に至らなかったのではないか?と言う思いと,あの状況のまま親の会社にいてもたいした改革も出来なく同じように閉店に追い込まれていただろう,と言う思いです。小さい子供が二人いる状況で廃業せざるを得ない状況に追い込まれる自分を想像するだけで本当に恐ろしいです。
私が今仕事を頑張れている原動力がここにあります。どんな時も私の味方で好きな様にさせてくれた親に感謝の気持ちを表し,世の中に私を必要としてくれている人がいて事業が成り立っている所を見せたい。何よりも私が生き生きと働いている姿を見せる。自分の事業が息子の代にも引き継がれると言う希望が無くなってしまった親に出来る恩返しはそれしかないと思います。
事業を継がない決断をする際には色々な方に相談をしました,口を揃えて皆さんが言ったのは”親は子供の幸せを願っている。子供が楽しそうに働いている姿を見るのが楽しいから継がない事はそんなに気にする必要はないのではないか” そんな言葉に後押しをされ事業を継がない決断をしました。その決断には全く後悔はしていません。
跡継ぎ経営者としては全く駄目だった私ですが,起業経営者としてこれからも頑張っていきたいと思います。父からの電話でそんな事を又思いました。
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