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日本唯一の経営者専門スーツ仕立て屋
メディア掲載
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positano news

2026年9月3日

ナポリ・ファッションの卓越性から着想を得たILSARTO。
それは、ナポリを愛してやまない日本人、末廣徳司が手がける著名なオーダースーツブランドである。
彼が自らのブランドにふさわしい言葉を見つけたのは、日本語でも英語でもなかった。
イタリア語だった。

1972年に奈良で生まれ、大阪で育ち、
日本でも屈指の難関大学のひとつである早稲田大学を卒業した末廣徳司は、
自らの会社を「ILSARTO」と名付けた。
定冠詞と名詞をひとつにつなぎ合わせ、まるでひとつの印章のようにした名前である。
その理由について、彼は自身のブログで驚くほど率直にこう説明している。

「なぜなら、私はイタリアが好きだから。特にナポリが大好きだからです」

しかし、これは単なる異国趣味ではない。
すべての始まりは、「肩」にあった。
末廣は、なで肩で肩幅が狭い。
若い頃、彼にとってそれは深刻なコンプレックスだった。
高校時代には、母親の肩パッドを制服のジャケットに入れていたほどである。
肩幅が広くなければ、自分は決して格好よくなれない。
そう信じていた。

ところがある日、人生で初めてオーダースーツを仕立てることになる。
鏡に映った自分を見た時、彼は初めて「これならいい」と思える自分自身の姿に出会った。
そのジャケットは、ナポリ仕立てだった。
自然な肩。
肩パッドを使わない構造。
そして柔らかな仕立て。
それまで自分では欠点だと思っていた特徴が、むしろ魅力へと変わっていた。
その一着を仕立てたサルトリアこそ、現在もILSARTOの服を縫い続けている仕立て屋である。

しかし、そこにたどり着くまでの末廣の道のりは長く、決して順風満帆ではなかった。

祖父も父もアパレル業を営む家庭に生まれた。
祖父は紳士服を扱い、父は婦人服店を経営していた。
そんな環境で育った末廣は、自分には生まれつき服を着こなす才能があると思い込んでいた。

ところが、高校生の時の初デートで、その自信は打ち砕かれる。
男子校に通っていた彼にとって、女の子と会える機会は数えるほどしかなかった。
そんな大切な初デートの日、末廣は自分で選んだ服を着て現れた。
すると彼女は彼を見るなり、こう言った。

「よくそんな格好で、ここまで来られたね」

そして、その場で振られてしまった。
彼を救ったのは、姉だった。
姉は末廣のために服の組み合わせを考え、靴下の色まで指定してくれるようになった。
本人には、自分で選んだ服と姉が選んだ服の違いがよく分からなかった。
しかし、周囲の反応は明らかに違った。

「格好いいね」

そう褒められるようになった。
褒められることで自信が生まれた。
自信がつくと成績も上がった。
そして最終的には、周囲の同級生から「無理だ」と言われていた早稲田大学への合格を果たした。
服が、人から見られる自分の印象を変える。
そして同時に、自分自身が自分を見る目までも変える。
この発見こそが、その後の末廣の人生を動かす原動力となった。

末廣は、まだ店舗数も少なかった創業初期のユナイテッドアローズで、
アルバイトの倉庫スタッフとして働き始めた。
当時は、日本のファッション業界を代表する一流のプロフェッショナルたちが、
若いスタッフに直接指導していた時代だった。
大学卒業後は、日本を代表する大手アパレル企業のひとつであるワールドに入社。
商品開発を担当し、1週間で5万点以上を売り上げるヒット商品を生み出した。
さらに北京や上海で100店舗以上の出店にも携わった。

32歳の時、末廣は家業に戻る。
大企業で学んだ方法を使えば、3年間で売上を5倍にできる。
そう確信していた。
しかし、結果は正反対だった。
社員たちは彼の話を聞かなくなった。
売上は落ちた。
ストレスによって、末廣自身も仕事から離れざるを得なくなった。

そんな彼に転機を与えたのが、コンサルタントの藤村正宏だった。
藤村は末廣に教えた。
小さな会社は、大企業の効率性を追いかけても成長できない。
自分たちにしかない独自性を磨き、一人ひとりのお客様と深い関係を築くこと。
そこにこそ、小さな会社の価値があるのだ、と。

2009年、37歳になった末廣は、経営者専門の出張型オーダースーツ店としてILSARTOを創業した。
完全予約制。
1日に対応する顧客は最大3人。

大阪のメインサロンは淀屋橋の船場ビルディングにある。
1925年建築の建物で、国の登録有形文化財にも指定されている。
4階まで吹き抜ける中庭は、まるで別の時代からそのまま残されたような独特の空気を持っている。
東京・代官山には2つ目のサロンも構える。

創業から17年間。
これまで2万人を超える経営者や企業幹部の装いを仕立ててきた。
著書『装いの影響力』は、書店に並ぶ前に重版が決まり、中国語にも翻訳された。
トミー・ヒルフィガーの商品開発にも携わった。
日本を代表する経済新聞、日本経済新聞からも、経営者向けの服装セミナーや連載を任されている。
また、日本全国のロータリークラブやライオンズクラブで講演を行っている。
テーマは一貫している。

「経営理念を身に纏う」

ILSARTOの考え方は、ひとつのシンプルな原則から始まる。
会社のイメージは、経営者のイメージそのものである。
だからこそ、経営者が何を着るかという選択は、れっきとしたマーケティング活動なのである。
しかし、家業の事業承継に失敗した経験を包み隠さず語る末廣は、
年月を重ねる中で、そこにより内面的な意味を加えるようになった。
自分自身が会社を継ぐことができなかった。
だからこそ、他の経営者たちには、長く続いていく会社をつくってほしい。
その力になることが自分の使命なのだ、と語る。

「ILSARTOが仕立てているのは、単なるスーツではありません。
“あなた”というブランドです」

ILSARTOは毎月、
『IP — il protagonista(主役)』という冊子を発行している。
毎号、一人の経営者を取り上げ、その人物の歩みや生き方を紹介するものだ。
これまでは、登場人物はすべて日本人だった。

しかし今回、初めてイタリア人経営者が主役に選ばれた。
その人物が、ナポリの保険事業家であり、
IGB Insurance Gold Brokersの創業者であるアンジェロ・コヴィエッロ氏だ。

アンジェロはロータリアンでもあり、私たち編集部とも親交がある人物である。
これまで本紙でも、彼について何度も紹介してきた。
そこにはいつも、「プロフェッショナリズム」と「人間性」が深く結びついた彼の姿がある。
その精神は、彼がロータリー国際の活動の中で大切にし、実践し続けているものでもある。
ロータリー国際は、世界中で150万人以上の専門家やリーダーによって構成される、
世界最大級の国際奉仕団体である。

その理念は、
「超我の奉仕(Service Above Self)」
1905年、弁護士ポール・ハリスによってシカゴで創設され、
倫理的理念を地域社会や世界規模の具体的な人道支援プロジェクトへと変えてきた。
今回、私たちは改めてロータリアンであり経営者でもあるアンジェロ・コヴィエッロ氏に話を聞いた。
彼は熱を込めてこう語った。

「私がロータリークラブ・ナポリ東の会長を務めていた時、日本のロータリアンである末廣徳司さん
からメールをもらいました。
『ホテル・ヴェズヴィオで行われるあなたたちの例会に参加したい』
という内容でした。
彼は小柄な男性ですが、とても大きな共感力を持った人です。
私たちの前に現れた時、彼が知っているイタリア語はたった二つだけでした。

『Amo Napoli(ナポリが大好きです)』

それを聞いた瞬間、私たちもすぐに彼を好きになりました。
彼はファッションデザイナーである以前に、哲学者のような人物です。
彼のブランドは日本の主要大学でも紹介され、
日本を代表する多くの経営者たちの装いを手掛けてきました。
さらに素晴らしいのは、
彼のブランド名がイタリア語で『仕立て屋』を意味する“IL SARTO”であることです。
使われている上質な生地もナポリで買い付けられ、
本人が着ているジャケットも、柔らかなシャツ袖の肩を特徴とする典型的なナポリ仕立てです。
そして、彼のナポリへの愛を象徴するもうひとつの出来事があります。
ブランド創業20周年を、彼は日本の友人たち、そして私たちナポリの新しい友人たちとともに、
ナポリで祝う予定なのです。

しかし、私が最も驚いた出来事は、この夏のある朝に起こりました。
世界でも屈指のネクタイブランドを率いるマウリツィオ・マリネッラ氏から、
突然電話がかかってきたのです。
彼も驚いた様子で言いました。

『アンジェロ、君が大阪の主要な新聞の一面に載っているよ。君の仕事と人生についての記事だ』
と。

ILSARTOの『IP』という冊子で、初めてイタリア人が取り上げられたのです。
私はそのことをとても嬉しく思い、皆さんにも共有したいと思いました。
友情は、壁や距離を越えることができる。
そして、対立の多い今の世界だからこそ、友情を実践しなければならない。
私の友人で、RAIのジャーナリストでもあるジャンフランコ・コッポラも、いつもそう話しています」

今回の『IP』は、日本語とイタリア語による二か国語版で制作された。
ナポリで生まれた素晴らしい交流の物語を、日本の読者へ伝えるためである。

さらに末廣は、アンジェロに一着の浴衣をプレゼントした。
日本の伝統衣装である浴衣。
しかし、その生地に使われたのは、ナポリの生地だった。
しかも、プレゼントした時、末廣自身も同じナポリ生地で仕立てた浴衣を着ていた。

日本とナポリ。
二つの文化が、一つの縫い目の中で出会った一着だった。

ILSARTOは今年、創業17周年を迎える。
そして3年後の20周年。
末廣はナポリで記念パーティーを開催することを計画している。
なぜなら、ナポリという街を心で感じてもらいたいからだ。
ソレント半島にまで広がる美しい土地。
自然の美しさだけでなく、人々の暮らしや社会の魅力にもあふれた場所。
そして何より、そこに暮らす人々は本当に温かく、
訪れる人を心から歓迎してくれる。
末廣との物語を私たちに語ってくれたアンジェロ・コヴィエッロ氏に、
心から感謝したい。

末廣徳司。

イタリア語の一語を会社の名前に掲げ、
ヴェスヴィオ火山の麓で仕立てられた、
肩パッドのない柔らかなジャケットによって人生を変えた一人の日本人。
その物語そのものが、ナポリという街を象徴する大きなメタファーなのかもしれない。

ナポリは時に、人生の目的地となる。
そして同時に、新しい人生が始まる出発点にもなる。
その力は、今も変わることなく生き続けている。