実は服に対して強いコンプレックスを持っています。
父の会社に就職、しかし全く上手く行かない日々
大学を卒業し、アパレル最大手の会社であるワールドに入社しました。ワールドに入社した後は若いうちから色々な仕事を経験させて頂き、駐在員として中国にも赴任し順調にキャリアを積み重ねていきました。
でも順調なのはここまででした。ワールドを退職し、父の会社に入社してから仕事が全く上手くいかなくなったのです。父の会社は大阪の郊外にあるミセス服の専門店、ネット販売は勿論全くしておらず地元のお客様と如何に良い関係を築いていくのかが非常に大切なお店です。
対して私がワールドで学んできたのはサプライチェーンマネージメント、百貨店や駅ビルなどターミナル性のある施設に店舗を出店し、全国にあるお店を全く同じマネージメントで管理運用していく手法です。
カンタンに言えば全国にあるお店が金太郎飴状態で全く同じ、だからこそ規模のメリットを使い、同じ商品を大量に効率的に販売する事が出来たのです。ワールドに在職中は全く自覚をしていなかったのですが,私は大企業病でした。会社の力で出来ている事がいつしか自分の力で出来ていると錯覚をする様になっていたのです。
神戸ポートアイランドのワールド本社ビル
父の会社は一言で言えば“お客様との関係性”ワールドで学んできたのは“効率”全く真逆のものです、でも当時の私はワールドで学んだものが一番であると思いこんでいたのでその“効率”を父の会社に取り入れようとしました。
4店舗とも全く同じ品揃えにし、個性的で売れないメーカーや人間関係だけで繋がっているメーカーの商品をどんどん止めていきました。これで効率よく売上が拡大する!私は信じて疑いませんでしたが、結果は真逆でどんどん売上が下がっていったのです。
そしてもう一つはスタッフとの関係の悪化です、売上をあげる事こそが仕事の目的であると考えていた私はスタッフとの会話の始まりは“昨日の売上いくら?”でした。売上の事しか聞かない私、それでも私の言う事を聞いて売上が上がれば言う事を聞いてくれたと思うのですが言う事を聞いても全く売上が上がらないので、スタッフとの距離が急速に開いていき,最後には社長である父の言うことは聞けても、息子の貴方の言う事は聞けないし、聞きたくもないとスタッフから全く相手にもされない状態になりました。
それまでの人生で自己概念も最悪で,毎日が面白くなく健康診断も毎年引っかかるほどストレスで体調も最悪の日々が続きました。
藤村正宏先生との出会い
そんな最悪の状況の時にマーケティングコンサルタントの藤村正宏先生に出会いました。藤村先生は私にこう言いました。
売上を上げることが仕事の目的だなんて寂しくない?
仕事と言うのは自分の出来る事を通してお客様に愛を届ける事だ!
趣味を仕事にプラスすれば仕事は楽しくなる!
最初は綺麗事にしか聞こえませんでした。それまでは結果至上主義、結果(売上)を残すことが仕事の目的であり、結果を残せない人はいる意味がない。又趣味は趣味、仕事は仕事、趣味と仕事は分けなければいけない。そう思っていたのです。
しかし藤村先生のお話を聞いていると少しづつですが自分の中に変化が現れ始めました。
仕事の目的ってもしかしたら売上を上げる以外にもあるかも知れない。
好きな事を仕事に取り入れてもいいのかも知れない。
そう思い始めました。そんな時に高校生の頃の感覚“服って人の気分を変えるパワーがあるんだ”と感じた事が思い出されてきて、服を売るのではなく、服を通してどんな体験をして欲しいのか?それが私の仕事の目的なのではないかと思い始めたのです。
そしてメンズを立ち上げる
そして私自身が大好きなのがメンズファッションなので、父のお店でもメンズを取り扱ってみよう。そうする事で少しでも仕事が面白くなるかも知れない、そう思ったのです。とは言えお金を掛けるわけにはいきません。
そしてスタッフとの関係も最悪でしたので中でもまだ関係がそこまで悪くなかったスタッフのいるお店でメンズを始めてみました。と言っても、セレクトショップで買ってきたネクタイを2.3本そのまま並べておく位です。そのまま売っているので利益も0です。しかも全く売れなかったのですがネクタイを置いてからお客様に色々な事を聞かれるようになりました。
このシャツにはどんなネクタイを合わせたら良いのか?
キレイなネクタイの締め方を教えて欲しい!
私にとってみたらすごく当たり前、常識中の常識な事も結構喜んでもらえて、もしかしたら私の持っている知識って人のお役にたてるのかもしれない。ネクタイは全然売れてなく売上は0だったのにも拘わらず、仕事が確実に面白くなっていったのです。そしてそこから最初は出張型の仕立て屋としてお客様の会社やご自宅に採寸に行き又お届けをさせて頂くと言うサービスから始め今の仕事に繋がっていきました。
創業時のプロフィール写真
創業時のコンセプトは(今でも変わっていませんが)装う事で生まれる自信を届ける、これはまさに初デートで服装を100%否定され服に苦しめられた私自身が、服によって自信を取り戻したので私が届けられるものはこれしかないと感じたからなのです。
他の服屋さんと違う所はここにもあります。服にコンプレックスを持っている人間が今では洋服屋をしている。そのギャップがお客様に安心感を感じさせ、末廣さんもそうだったんだ,そしたら自分も変われると感じてもらえる部分です。
そしてもう一つは承認、私が心掛けているのはお客さんをありのままで受け容れさせて頂こうと意識をしている事です。特に昔の私の様に洋服に自信のない人にとっては服屋に行く事自体が苦痛なのです。ですので承認する文化を大切にし,服選びが苦手な方であっても「安全で安心」な場を作ろう、そう考えています。
以上が私の仕事観を決定づけた価値観であり,私自身の軸なのです。これからもこの軸をぶらさずに仕事を続けていきたいと思います。
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