私が初めてスーツをお仕立て頂いた職人さんにイルサルトのスーツは縫って頂いています
生まれて初めての注文服
自分自身が生まれて初めてオーダーでスーツを仕立てて時の事は今でも鮮明に覚えています。そのお店は今はもう無くなってしまっているのですが,西麻布にあったセレクトショップでした。私がメンズファッションを大好きな事を知っていた大学の先輩が,知り合いでセレクトショップを経営していたこのお店のオーナーの方を紹介して下さったのがそのお店とのご縁の始まりでした。
お店は決して広いお店ではなかったのですが,それまでユナイテッドアローズやビームスと言った所謂大手セレクトショップにしか行った事のなかった私が,1対1のマンツーマンの恭しい接客を受けながら世界に一着だけの自分だけのスーツを創り上げていく時間は体験したことのない幸せを感じる時間でした。
それは今から20年前の1998年,私が26歳の時でした。美味しいエスプレッソを頂きながら(その時はただただ苦いとしか思えませんでしたが。。)生地を選び,様々な仕様を決めていく工程は何か大人の階段を上っている様な感覚になったものです。
コンプレックスを克服したナポリ仕立て
イルサルトが今,完全予約制のサロンをしているのはこの時の体験が記憶の何処かに残っていたからなのではないかと思っています。そして出来上がったスーツも本当に素晴らしいものでした。私が選んだのはライトグレーのドラッパーズと言うボローニャの生地商のフランネル(フェルトっぽい雰囲気)着心地も最高のスーツでした。
何よりも驚いたのが肩のラインの美しさです。私は所謂”なで肩”で肩幅も狭く,その事をコンプレックスに思っていました。肩にかけたカバンはずり下がってくるし,狭い肩幅はカッコ悪いと考えていました。当時流行っていたのは吉川晃司さんの様な胸板が厚い方が着ていた,肩幅の非常に広いスーツです。
少しでもその広い肩幅に近づけるために,学生服の肩には母親の肩パットを入れていたこともあります(笑)でもそのお店で仕立てたスーツを見た瞬間,見た事もない美しさに息をのみました。自分のコンプレックスに思っていたなで肩が見た事もないような美しい曲線を描いていたのです。
あの職人さんを探し続ける
何が起きたのか?と思い,そのオーナーさんに聞いたところ,この肩の部分がナポリ仕立てのスーツの真骨頂で,肩の部分を軽く仕上げ又”のぼりのライン”と呼ばれる肩のラインを敢えて角度をつけているので,なで肩の人の方が形に合いやすい。又このスーツはナポリ仕立てのスーツを日本で一番美しく仕上げる職人さんに縫ってもらっている,そんなお話をしてくださいました。
そんな説明に深い納得をし,そこからナポリ仕立てのスーツとはどういうものかを色々調べていったのです。またそれと同時に自分の体型に対するコンプレックスも無くなっていきました。
そしてそれから11年後の2009年イルサルトを創業したのですが,真っ先に浮かんだのがこの職人さんの事でした。私が感じたあの感動を沢山のお客様に体験をしてもらいたいと思い色々な知り合いを辿り,1998年に私のスーツをお仕立て頂いた職人さんを探し当てました。
服ではなく感動や信用も一緒に仕立てる
そしてお取引をして頂ける様にお願いをしたのですが,最初は全く相手にされませんでした。業界でも有名な工房さんなので色々な意味で敷居が高い事,そして創業当初は私自身の信用が全くなかったのでお仕立て頂く事は叶いませんでした。
そこから少しずつ実績を積み,私自身の信用を少しづつ作っていく中で何回もアプローチを重ね,ようやく創業5年目くらいからお取引をさせて頂ける様になり,昨年くらいからはお互いに重要なお取引としてのお付き合いが出来るようになってきました。
1998年の偶然の出会いから時代を超え,今はイルサルトのお客様のスーツを丁寧にお仕立て続けてくださっている事に感謝の気持ちしかありません。ただ単にスーツを仕立てるのではなく,私が体験した感動や積み重ねた信用をも一緒に仕立て頂きスーツに込めています。イルサルトのスーツを纏い,そんな事も感じて頂ければこれ以上の喜びはありません。
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